JR博多シティ つばめの杜ひろば

デパートの屋上遊園地というものは過去の遺物で、現在では一部の施設で細々と営業が続けられている他、屋上庭園やビアガーデン会場に改装されたり、閉鎖されたりしています。

この令和の時代において、新しくデパートの屋上遊園地が造られるわけない。誰しもそう思っていました…。


JR博多シティつばめの杜ひろば

JRおおいたシティ屋上広場

2021年3月、この時は九州を旅行していました。

長崎駅から特急かもめに乗車して、博多駅へと向かいます。

真新しい高架線上の長崎駅のホームを、ゆっくりと出発します。長崎は新幹線開業前夜です。

18時過ぎ、博多駅に到着しました。

九州各地へ向かう列車の発着地として、東海道山陽新幹線の終着地として、重要な役割を果たしてきた博多駅。九州新幹線開業により、新幹線の”西の終着”を鹿児島中央駅に譲ったものの、駅舎を現在の巨大駅ビルへと建て替えたことで、むしろその存在感がより大きくなった気がします。

そんな巨大駅ビルの中には、JR九州が展開する商業施設「アミュプラザ」、”デパート”である「博多阪急」が入居しますが、それらには目もくれず一気に屋上へ。


西の地方にいるためか、外は東京の18時過ぎよりもだいぶ明るい気がしました。

屋上には、綺麗に整備された屋上庭園「つばめの杜ひろば」が広がります。

そのシンボルが、旅の安全を祈願して建てられた「鉄道神社」です。

まさに多くの旅人が行き交うターミナル駅にぴったりの神社ですが、その一方でビルやデパートの屋上にある”祠”も思い起こされます。

境内の真ん中には、電車ごっこをする7人の子供がいます。この場所が”九州の鉄道の駅”であるという、アイデンティティを感じさせます。


綺麗な屋上庭園に、祠よりも立派な鉄道神社。

これだけでも十分素敵な屋上空間ですが、私はここを”現代に蘇ったデパートの屋上遊園地”と呼びたいのです。

なぜならば、ここには屋上をぐるりと一周するミニ鉄道=遊戯施設が存在するからです。

緑の中に敷かれた線路は、ここが鉄道駅だということをこれでもかと感じさせます。しかし、それは同時に”デパートの屋上遊園地”を彷彿させるものでもあるのです。

線路はモニュメントではありません。つばめ電車という立派なアトラクションで、毎日運行されています。


デパートの屋上遊園地というのは、大人が買い物をしている間、それを待つ子供のために造られた空間です。

一角にある「クロちゃん広場」は、6歳以下の子供が遊ぶための場所です。三輪車などの遊具が置かれており、夏にはプールもあるそうです。

商業施設の屋上に造られた、子供が遊ぶための施設。”遊園地”とはまた違った遊びのスタイルですが、理念は”デパートの屋上遊園地”と全く同じではないでしょうか。


ただし、つばめの杜ひろばは”大人のための空間”でもあります。

写真中央に広がる「天空の広場」は、飲食スペースとして利用でき、「つばめ電車」はこの広場の周りを走っています。写真奥には鉄道神社、左手には「展望テラス」があります。

展望テラスへ上がると、多くの人々が景色を楽しんでいました。ちょうど夕暮れの美しい時間帯だからだと思いますが、ここが人が一番多かったです。

駅と港を一直線で結ぶ大博通り、港のシンボル博多ポートタワー、海には能古島、志賀島が見えます。空港の近い福岡・博多の街には高い建物がなく、その分見晴らしが良いです。

つばめの杜ひろばは全体を壁に囲まれており、外の景色を楽しめるのは階段を登った展望テラスしかありません。

実際にはもう1箇所、列車展望スペースというものがあるそうですが、見逃してしまいました。


つばめの杜ひろばを手掛けたのは、デザイナーの水戸岡鋭治氏です。JR九州の列車のデザインを手掛けたことで一躍脚光を浴び、現在では全国各地の鉄道でデザインを手掛けます。

氏の手掛ける列車内には子供向けのボールプール、駅などの空間にはミニ鉄道を用意することが多いです。大人だけでなく、子供が楽しむことも考えているデザイナーなのでしょう。

その一方で、氏は”伝統”も重視しています。このつばめの杜ひろばは、デパートの屋上遊園地という伝統を意識している、、、というのは私の勝手な妄想です。

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