デパートの屋上遊園地というものは過去の遺物で、現在では一部の施設で細々と営業が続けられている他、屋上庭園やビアガーデン会場に改装されたり、閉鎖されたりしています。
令和の時代において、新たなデパートの屋上遊園地が誕生するわけない。誰しもそう思っていました。
JRおおいたシティ屋上広場
2021年11月、出張で九州にやってきました。
大分駅に立ち寄る時間があったので、以前から気になっていた大分駅の駅ビルの屋上へ向かいます。
「JRおおいたシティ」と名付けられた駅ビルは、JR九州が手掛ける商業施設アミュプラザや、ホテルなどが入居します。そしてその屋上には「シティ屋上広場」が広がっています。
博多駅の駅ビル屋上に広がる「つばめの杜ひろば」と同じく、水戸岡鋭治氏が手掛ける屋上庭園です。
ということで基本的にはつばめの杜ひろばと同じような雰囲気なのですが、大きく違った印象も受けました。一言で表すならば、”上位互換”です。
まずは鉄道駅ということで、ここにもやはり鉄道神社があります。が、その手前には立派な参道があります。
つばめの杜ひろばにも参道はあるのですが、こっちの参道は店が軒を連ねる、より本格的な参道なのです。もちろん営業しており、お土産や軽食を買うことができます。
その奥にある祠(本殿?)と、電車ごっこをする7人の子供は同じなのですが、祠の周りには水が張られており、やっぱり少し上位互換な気がします。
つばめの杜ひろばには線路が敷かれており、「つばめ電車」が運行されています。もちろんここシティ屋上広場にも、同様のミニ鉄道が運行されています。
複線で。
厳密に言えば、線路が2周分敷かれているだけで、複線の定義には外れていますが、見た目だけで言えば完全に複線です。
このミニ鉄道の名は、「くろちゃんぶんぶん号」と言います。
2つの線路に2つのホームを構える乗り場は、もはや駅です。誰がどう見ても、博多駅のつばめ電車の上位互換です。
こうした立派な遊戯施設が、人を乗せて、実際に動いている姿を見ると、やはり私にはここが”デパートの屋上遊園地の現代版”に見えてしまうのです。
ここはデパートではないですし、遊園地でもありません。しかし、”大人が買い物を楽しむ間に、子供を遊ばせる場所”としては、かつてのデパートの屋上遊園地と全く同じなのです。
シティ屋上広場の路線網は素晴らしく、複線だけでなく、ホテル入口まで伸びる”支線”もあります。文字通り縦横無尽に列車を走らせることができ、”鉄道のミニ遊園地”を名乗っても良いくらいの密度です。
さすがにスーツを着た大人が1人で乗るのは厳しかったですが、”屋上庭園を歩いたら線路と遭遇した”という体験は非常に楽しいものです。
JRおおいたシティ屋上広場の実力はまだまだです。むしろここからが本番です。
赤と白で塗られた「紅白展望台」。
ブランコや滑り台があり、展望台というよりはアスレチック要素が強い建物です。そしてその奥には、
とうとうタワーまで造ってしまったのか、と思ってしまうレベルの立派な建物があります。
タワーの正体は「夢かなうぶんぶん堂」というお堂です。内部は二重螺旋構造になっており、入口から出口まで一方通行で登ることができます。
内部を上がると、沿岸部の工場地帯の方まで見渡すことができました。
今回は駅だけで、市内を歩くことはできませんでしたが、こうして見るとなかなか立派な街並みです。いずれ、じっくり歩いてみたいです。
続いて、シティ屋上広場を眺めます。神社と参道は、写真奥にあります。
ここまで博多駅「つばめの杜ひろば」と比較してきましたが、そもそも大分駅「シティ屋上広場」の方が広いスペースを確保しているため、こちらの方が充実したものになるのは必然とも言えるでしょう。
また、JR博多シティ開業は2011年ですが、JRおおいたシティはその4年後の2015年に開業しています。
後発組のため、広いスペースのため、やりたいことをより多く実現した結果、上位互換と言えるような素晴らしい空間が完成したのでしょう。
神社、参道と仲見世、二重螺旋構造のお堂。
施設の公式ホームページによると、【「四季」と「日本の伝統」を学びながら遊べる広場です】と記載されています。水戸岡鋭治氏は「日本の伝統」を表現するため、これら施設を造ったのでしょう。
けど、本当にそれだけでしょうか?「屋上にこんなものがあったらワクワクするな、面白いな」という思いもあったのではないでしょうか。
線路をこれほど多く敷く必要はあったのでしょうか?線路が敷いてある、乗り物が動く、乗り物に乗れるという”ワクワク”が、製作者の思いのどこかに込められているのではないでしょうか。
そしてそのワクワクこそが、私がデパートの屋上遊園地に感じているものなのです。
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